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📋 この記事でわかること
- 繰上償還が決まる条件と、目論見書での確認場所
- 「純資産総額50億円」という目安と信託約款の実際のズレ
- 償還されたときの税金とNISA非課税枠の扱い
📋 この記事の目次
投資信託の目論見書を開くと、信託期間の欄に「無期限」と書かれていることがあります。ずっと持ち続けられるという意味に読めますが、そのすぐ下に「繰上償還」という項目が並んでいます。
無期限なのに、途中で終わることがある。この2つが同じページに書いてあるのは、最初は少し不思議に見えます。積立を10年、20年と続けるつもりなら、どんなときに終わるのかは知っておきたいところです。
繰上償還は「口数」で決まっていることが多い
繰上償還(くりあげしょうかん)とは、あらかじめ決められた信託期間の終了を待たずに、投資信託の運用が終わることです。運用会社が集めたお金を株式などで運用しきれなくなったとき、ファンドをたたんで投資家にお金を返す手続きだと考えるとわかりやすいです。
その条件は、商品ごとに信託約款で決められていて、交付目論見書の「手続・手数料等」のページに要約が載っています。ここで意外なのが、条件の書かれ方です。
多くのファンドで基準になっているのは、純資産総額ではなく受益権の口数です。受益権の口数とは、そのファンドが発行している持ち分の総数のことで、投資家が買うと増え、解約すると減ります。
条件はファンドごとに違う
繰上償還の条件としてよく置かれているのは、次のようなパターンです。
| 条件のパターン | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 口数が一定を下回る | 受益権の総口数が10億口や30億口を下回った場合 | 基準の口数はファンドごとに異なる |
| 対象指数の改廃 | 連動先のインデックスが廃止・変更されたとき | インデックス型で置かれることが多い |
| 受益者にとって有利 | 償還したほうが投資家のためになると運用会社が認めたとき | 判断の余地が残る条項 |
| やむを得ない事情 | 運用の継続が困難になったとき | 運用会社の事業終了などを含む |
出典:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)交付目論見書ほか・2026年
たとえばオルカンの愛称で知られるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の交付目論見書には、繰上償還となる場合として「受益権の口数が10億口を下回ることとなった場合」と書かれています。よく見かける「30億口」はほかのファンドの基準で、すべてに共通する数字ではありません。
なお国内の公募投資信託は5,836本あり、純資産総額は359兆9,199億円です(投資信託協会「数字で見る投資信託」・2026年6月末)。これだけ本数があれば、資金が集まらず運用が続かなくなる商品が出てくるのも自然なことです。
「純資産総額50億円」は約款の条件ではない
繰上償還を調べていると、「純資産総額が50億円未満のファンドは避けたほうがいい」「100億円以上あると安心」といった目安によく出会います。判断材料としては役に立つのですが、ここには一つ注意点があります。
純資産総額は「口数 × 基準価額」で決まります。つまり基準価額が上がっていれば、口数が減っていても純資産総額はそれほど減らない、ということが起こります。値上がりが続いている局面では、純資産総額を見ているだけでは口数の減少に気づきにくいわけです。
基準価額と純資産総額の関係については、基準価額とは?高い・安いの誤解を解くで解説しています。
オルカンの余裕は約2,555倍でした
実際に自分の積立先で計算してみるのが早いと思い、私はオルカンの数字を並べてみました。
交付目論見書に書かれた繰上償還の基準は10億口です。一方、請求目論見書に載っている発行済口数は、2025年10月末時点で2兆5,553億口ありました。割り算をすると、基準の約2,555倍の口数が発行されていることになります。
純資産総額でいえば8兆2,758億円です(三菱UFJアセットマネジメント・2025年10月末)。基準の10億口を純資産に換算すると30億円台で、桁が4つ近く違います。数字を並べてみると、少なくともこのファンドについては、繰上償還を心配して積立をためらう段階ではなさそうだと確認できました。
やってみてよかったのは、この計算がどのファンドでも同じ手順でできることです。目論見書で基準の口数を調べ、運用報告書か請求目論見書で発行済口数を調べて割り算する。それだけで、漠然とした不安が具体的な倍率に変わります。
こうした数字は、目論見書のどこを開けば載っているかがわかっていれば5分ほどで集まります。書類の見る場所は目論見書はどこを見る?初心者が確認する4項目で解説しています。
償還されると売るタイミングは選べない
繰上償還そのものは、投資家を困らせるための制度ではありません。規模が小さいまま運用を続けると、売買コストの割合が重くなり、かえって投資家の不利益になることがあるためです。それでも、いくつか気に留めておきたい点があります。
1つ目は、現金化のタイミングを自分で選べないことです。償還日は運用会社が決めるため、相場が下がっている時期に重なる可能性があります。長期で持ち直すのを待つ、という選択肢が使えなくなります。
2つ目は、税金です。課税口座(特定口座・一般口座)で持っていた場合、償還時の差益は譲渡所得として20.315%が課税されます。含み損のまま償還されたときは、確定申告で他の利益と損益通算できる仕組みがあります。
3つ目は、NISAの枠です。NISA口座で保有していた分は償還されても課税されませんが、使った枠がその場で戻るわけではありません。非課税保有限度額は簿価(買ったときの金額)分が翌年以降に再利用できる一方、その年の年間投資枠360万円は同じ年のうちには復活しません(金融庁「NISA特設ウェブサイト」)。
繰り返しになりますが、口数が基準を下回れば自動的に償還される条項もあり、その場合は異議申し立ての期間が設けられません。気づいたときには決まっている、ということが起こり得ます。
買う前・持っている間に見ておく6項目
- □ 交付目論見書の「繰上償還」欄に、口数などの具体的な条件が書かれているか
- □ 信託期間が無期限か、期限つきか(期限つきなら償還日はいつか)
- □ 直近の純資産総額と、1年前・3年前からの推移
- □ 発行済口数が減り続けていないか(運用報告書で確認できます)
- □ 同じ指数に連動する他のファンドと比べて規模が極端に小さくないか
- □ 運用会社がそのシリーズを継続する姿勢を示しているか
コストの見方とあわせて確認したい場合は、信託報酬とは?投資信託の隠れコストを整理もご覧ください。
❓ よくある質問
まとめ
繰上償還の条件は、目論見書の「手続・手数料等」に数行で書かれています。多くは純資産総額ではなく受益権の口数で定められていて、基準となる口数はファンドごとに違います。
そこで、基準の口数と発行済口数を割り算してみると、どのくらい余裕があるのかが倍率という形で見えてきます。ネット上でよく見る「50億円」「100億円」という目安も参考にはなりますが、自分の持っているファンドの数字で確かめておくと、値動きが荒れたときにも落ち着いて判断しやすくなります。
どの商品を選ぶかは、こうした情報を集めたうえでご自身で決めるものです。一緒に少しずつ学んでいきましょう。
