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この記事でわかること
- 基準価額の高い・安いは「割高・割安」を意味しないこと
- 損益は「基準価額×口数」で決まる仕組み
- 高い安いの代わりに見るべき選び方のポイント
投資信託を並べて見ていると、「基準価額が5,000円のファンド」と「基準価額が2万円のファンド」があって、なんとなく安い方がお得に見える——そんなふうに感じたことはないでしょうか。株のイメージを持っていると、値段が安い方が買いやすくてお得な気がしてしまいます。
でも、投資信託の基準価額は株価とは少し性質が違います。ここを勘違いしたまま選ぶと、選び方の軸がずれてしまうことがあります。この記事では、基準価額の高い・安いが何を表しているのか、そして本当は何を見て選べばいいのかを、仕組みから順番に見ていきます。
この記事の目次
投資信託の注文から受渡までの全体の流れは、投資信託の買い方・売り方|注文から受渡までの流れにまとめています。
基準価額の高い・安いは「お得さ」を表していません
先に大事なところをお伝えすると、基準価額が高いか安いかだけでは、そのファンドが割高なのか割安なのか、買い時なのかは判断できません。
理由はシンプルで、投資信託の損益は「基準価額」だけでなく「基準価額×口数」で決まるからです。基準価額が安いファンドはその分たくさんの口数を買えるので、金額ベースで見ると有利にも不利にもなりません。
株価の場合は「1株いくら」で割高・割安がある程度議論されますが、投資信託の基準価額は運用が始まった時期などによって変わる数字で、高い安いにお得・損の意味はほとんどないのです。
基準価額とは何か——純資産総額を口数で割った数字
まず言葉の意味を確認しておきます。基準価額とは、投資信託の1口あたりの価値を示す数字で、一般的に1万口あたりの金額で表示されます。
計算式にすると、そのファンドが持っている株式や債券などをすべて時価で評価し、利息や配当などを加えた資産の合計から、信託報酬などの費用を差し引いたものが「純資産総額」です。この純資産総額を、そのファンドの総口数で割ったものが基準価額です(2026年8月7日時点で投資信託協会の用語集を確認)。
つまり基準価額は、ファンドの規模そのものではなく「1口あたりいくらか」を示す割り算の答えです。純資産総額が大きくても口数が多ければ基準価額は小さくなりますし、その逆もあります。
信託報酬などのコストが基準価額から日々差し引かれている点は、以前の記事ノーロードとは?購入時手数料で損しない確認点でも触れています。
「安い方がたくさん買えてお得」がなぜ誤解なのか
初心者がいちばんつまずきやすいのが、「基準価額が安い方が口数を多く買えるからお得」という感覚です。口数が多い方が得した気分になりますが、金額で考えると結果は同じになります。
運用会社の解説にわかりやすい例があるので、数字で見てみましょう。同じ投資先に投資するファンドAとファンドBがあり、それぞれに100万円ずつ投資したとします。
| 項目 | ファンドA | ファンドB |
|---|---|---|
| 基準価額 | 1万円 | 2万円 |
| 100万円で買える口数 | 100万口 | 50万口 |
| 投資先が10%値上がりした後の基準価額 | 1万1,000円 | 2万2,000円 |
| 売却したときの金額 | 110万円 | 110万円 |
| 損益 | +10万円 | +10万円 |
出典:三井住友トラスト・アセットマネジメント「いちばんはじめの金融講座」の例を基に作成
基準価額が安いファンドAは口数を2倍買えますが、1口あたりの値上がり幅も半分です。結局どちらも同じ10万円の利益になります。
同じ投資先でも、運用を始めた時期のマーケット環境が違えば基準価額は変わってきます。だから基準価額の数字そのものを2つ並べて比べても、お得さの比較にはならないというわけです。
分配金が多い=お得、とも限りません
もうひとつ誤解しやすいのが分配金です。基準価額が安いと口数を多く買えるので、口数に応じて出る分配金も多くもらえてお得——という考え方です。
ただ、分配金はファンドの資産から支払われるもので、分配金を出すとその分だけ基準価額は下がります。これを「分配金落ち」と呼びます。たくさん受け取れたように見えても、自分の資産が別の場所(現金)に移っただけ、という場合もあるのです。
分配金を受け取るか再投資に回すかは目的によって考え方が分かれます。この点は分配金は再投資と受取どっち?目的別の選び方で詳しく解説しています。
では何を見て選べばいいのか
基準価額の高い安いで選べないなら、何を見ればいいのか。私が自分でファンドを比べたときに軸にしたのは、次の3つでした。
1つ目は、何に投資している商品なのかです。国内株か、全世界株か、債券か。中身によってリスクの大きさが変わるので、まずここを目論見書で確認します。
2つ目は、コスト、とくに信託報酬です。同じような投資先なら、毎年かかる信託報酬の差が長期では効いてきます。
3つ目は、基準価額の「水準」ではなく「これまでどう動いてきたか」という推移です。設定来チャートで値動きの大きさを見ておくと、自分が耐えられそうかの目安になります。
見落としやすい注意点
基準価額の見方で、初心者が誤解しやすい点を整理しておきます。
まず、基準価額が「1万円を割っているから割安」「上がりすぎているから割高」という判断はできません。基準価額はそのファンドの過去の運用結果であって、株の指標のような割安・割高の目安ではないからです。
次に、基準価額の高い安いだけで「買い時」も判断できません。買い時を当てにいくより、時間を分けて少しずつ買っていく方法が投資信託には向いているとされています。少額からの積立の考え方は月1万円の積立でも意味ある?20年後の試算でも取り上げています。
そして、基準価額の数字は証券会社によって表示単位が違って見えることもあります。1口あたりか1万口あたりかで桁が変わるので、比べるときは単位をそろえて見ることが大切です。
確認しておきたいチェックリスト
投資信託を基準価額で選びそうになったら、次の点を確認してみてください。
- □ 「安い=お得」ではなく、金額(基準価額×口数)で考えているか
- □ そのファンドが何に投資しているかを目論見書で確認したか
- □ 信託報酬などのコストを比べたか
- □ 分配金の多さだけで判断していないか
- □ 基準価額の水準ではなく、値動きの推移を見たか
- □ 比べるときに表示単位(1口/1万口)をそろえたか
よくある質問
まとめ
投資信託の基準価額は、純資産総額を口数で割った「1口あたりの価値」で、高い安いにお得・損の意味はほとんどありません。損益は基準価額×口数で決まるため、安いから有利ということはなく、分配金の多さもそのままお得さにはつながりません。
選ぶときに見たいのは、基準価額の数字そのものよりも、何に投資しているか・コストはいくらか・どんな値動きをしてきたか、という中身の部分です。数字の大小に振り回されずに済むと、ファンド選びはぐっと落ち着いて考えられるようになります。
これから証券口座を開いて投資信託を選んでみたい方は、口座開設から商品選びまでの流れをSBI証券で新NISAを始める完全ガイドにまとめています。入口や順番を間違えると受け取れる特典で差が出ることもあるので、始める前に一度目を通しておくと安心です。
基準価額の見方がひとつ分かると、次はコストや投資先の見方も気になってくると思います。焦らず一緒に少しずつ学んでいきましょう。
