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この記事でわかること
- 贈与税の基礎控除110万円の数え方
- 「生活費だから非課税」が投資では通用しない理由
- 夫婦でNISAを使う前に確認したい5項目
この記事の目次
- ▸ 夫のお金で妻の口座を動かしていいのか
- ▸ 判断を分けるのは金額と使い道の2点
- ▸ 贈与税の基礎控除110万円はどう数えるのか
- ▸ 「生活費だから非課税」は投資では通用しない
- ▸ 夫婦で口座を持つと枠は2倍になる
- ▸ 見落としやすい注意点
- ▸ 夫婦でNISAを始める前のチェックリスト
- ▸ よくある質問
- ▸ Q. 夫婦間なら贈与税はかからないのではないですか?
- ▸ Q. 生活費として渡したお金で妻が積み立てるのは問題ありませんか?
- ▸ Q. 110万円を超えたらどうすればいいですか?
- ▸ Q. 専業主婦でもNISA口座は開設できますか?
- ▸ Q. 夫婦で同じ証券会社にする必要はありますか?
- ▸ まとめ
夫のお金で妻の口座を動かしていいのか
新NISAは1人1口座なので、夫婦それぞれが口座を持てば非課税で使える枠は単純に2倍になります。ただ、そこで手が止まる人は多いはずです。
我が家の場合、収入があるのは夫だけ。妻の口座で積み立てるなら、原資は夫の給料から出すことになります。「夫婦なんだから財布は一緒」という感覚と、「贈与税って親子とか相続の話じゃないの?」という曖昧な知識が混ざって、結局どちらの口座で始めるべきか決めきれませんでした。
私も同じところで詰まったので、国税庁のページを一次情報として読みにいきました。結論から言うと、夫婦間でも贈与税の考え方は普通に適用されます。ただし線引きははっきりしていて、金額と使い道の2つで決まります。
判断を分けるのは金額と使い道の2点
夫婦間の資金移動で贈与税を考えるとき、見るポイントは大きく2つです。
1つ目は金額です。受け取る人1人につき、1年間の合計が110万円以下であれば贈与税はかかりません(国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」・2026年8月30日時点で公式サイトを確認)。この場合は申告も不要とされています。
2つ目は使い道です。生活費として渡したお金は原則として非課税ですが、それをそのまま投資に回した場合の扱いは変わります。ここが見落とされやすい部分で、後ろのセクションで詳しく見ていきます。
つまり「夫婦だから何をしてもセーフ」でも「1円でも動かしたらアウト」でもありません。年間110万円というラインと、渡したお金が何に使われたかで判断が分かれます。
贈与税の基礎控除110万円はどう数えるのか
贈与税には「暦年課税」という数え方があります。その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた残りに課税される仕組みです(国税庁「No.4402」)。
大事なのは、110万円は渡す側ではなく受け取る側1人あたりでカウントするという点です。夫から妻へ100万円、夫の親から妻へ50万円を同じ年に渡した場合、妻が受け取った合計は150万円になり、110万円を超えます。
では超えたらいくらかかるのか。夫婦間の贈与は「一般税率」で計算します。基礎控除後の金額に応じて次のようになります。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | ー |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
出典:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率・暦年課税・2026年
たとえばNISAの年間投資枠いっぱいの360万円を夫から妻に渡したとします。360万円から110万円を引くと250万円。250万円は300万円以下なので税率15%、控除額10万円です。計算すると250万円×15%-10万円=27万5,000円の贈与税ということになります。
非課税で運用するための資金を用意した結果、その入口で27万円を超える税金が発生する可能性がある。この構図は知らないとかなり痛いところです。
「生活費だから非課税」は投資では通用しない
ここが一番の落とし穴でした。
国税庁は、夫婦や親子などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものには贈与税がかからないとしています(国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」・2026年8月30日時点で公式サイトを確認)。ここまでは多くの記事に書かれています。
ただし同じページには続きがあります。非課税になるのは「生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのもの」に限られる、という条件です。そのうえで、生活費や教育費の名目で受け取っても、それを預金したり株式などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかると明記されています。
投資信託の購入資金は、まさにこの「株式などの買入資金」に該当します。生活費として月々渡していたお金を妻がNISAで積み立てていた場合、その部分は生活費の非課税枠では説明できないという整理になります。
つまり「毎月の生活費から自然に積み立てているだけ」という説明は、金額が大きくなったときに通用しにくいということです。名目ではなく実際に何に使われたかで判断される、と読むのが素直でしょう。
もっとも、日常的な家計のやりくりの範囲まで神経質になる必要があるかというと、そこは金額感の問題です。年間110万円という基礎控除がある以上、月数万円の積立が直ちに問題になるとは考えにくい。気をつけるべきは、まとまった額を一度に移すケースです。
夫婦で口座を持つと枠は2倍になる
注意点が続いたので、そもそもの利点も確認しておきます。
金融庁によれば、NISA口座は1人1口座で、日本国内に住む18歳以上であれば誰でも開設できます。年間投資枠は最大360万円、非課税保有限度額(総枠)は1,800万円です(金融庁NISA特設ウェブサイト・2026年8月30日時点で公式サイトを確認)。
これを夫婦2人で使えば、年間720万円、生涯で3,600万円まで非課税の枠を持てる計算になります。専業主婦・主夫であっても18歳以上で国内居住であれば口座は開設できるので、片働き世帯でも枠自体は2人分あります。
私の場合、まず自分の口座で月3万円の積立から始めて、家計に無理がないことを確認してから配偶者の口座を考える順番にしました。いきなり2人分の枠を埋めようとすると、生活費の余力を超えて資金を動かすことになり、贈与税の論点にも早く到達してしまうからです。
生活防衛資金を確保したうえで無理のない金額から始める考え方は、生活防衛資金はいくら?投資前に残すお金の目安で解説しています。自分がどこまで値動きに耐えられるかはリスク許容度とは?自分に合う投資額の決め方が参考になります。
なお口座を開く順番や入口によって受け取れる特典が変わることがあります。ここは知らないと戻せない差が出る部分なので、SBI証券で新NISAを始める完全ガイドで申し込みの順番を確認してから開設すると無駄がありません。
見落としやすい注意点
枠が2倍になる話とセットで、押さえておきたい点がいくつかあります。
1つ目は「名義だけ妻」の状態です。口座は妻名義でも、入金も銘柄選びも売買判断もすべて夫がしている場合、実質的に夫の財産と見られる可能性があります。名義は配偶者でも中身は本人のものと見なされる、いわゆる名義預金と同じ論点で、相続が発生したときに問題になりやすい部分です。口座の管理は名義人本人が行うのが原則と考えたほうが自然でしょう。
2つ目は毎年同額を渡し続けるケースです。毎年決まった額を渡す約束が最初からあったとみなされると、初年度にまとめて贈与があったと扱われる可能性が指摘されています。これは個別事情によるので、繰り返し贈与を考えている場合は専門家への確認が要ります。
3つ目は記録が残らないことです。手渡しや使途不明の資金移動は、後から説明しづらくなります。振込で記録を残す、贈与契約書を作るといった対応が挙げられます。
4つ目は、そもそも贈与税の話を避けるという選択肢です。夫の収入が原資なら夫の口座で運用する。この形なら資金移動そのものが発生しないので、贈与税の論点は生じません。枠を2人分使いたいという理由だけで無理に資金を動かす必要はない、という考え方もできます。
夫婦でNISAを始める前のチェックリスト
- □ その年に配偶者へ渡す金額の合計が110万円を超えていないか
- □ 配偶者が他の人(親など)からも贈与を受けていないか
- □ 生活費として渡したお金を投資に回していないか
- □ 名義人本人が口座を管理・操作できる状態か
- □ 資金移動が振込などで記録に残っているか
- □ そもそも本人の収入の範囲で運用できないか検討したか
- □ 判断に迷う金額なら税務署・税理士に確認したか
よくある質問
まとめ
夫婦で新NISAを使うときの資金の扱いは、次の3点に集約されます。
1つ目は、夫婦間でも贈与税の考え方は適用され、判定は受け取る人ごとに年間110万円で行うこと。
2つ目は、生活費として渡したお金でも投資に回した部分は非課税の説明が通りにくいこと。
3つ目は、資金移動を伴わない形(本人の収入の範囲で運用する)を選べば、この論点自体が発生しないことです。
枠が2倍になるのは確かに魅力ですが、そのために税金の入口で損をしては本末転倒です。まずは自分の口座で無理のない金額から始めて、家計の余力と役割分担がはっきりしてから2人目を考える。私はその順番にしました。
今日できる一歩としては、配偶者の口座に今年いくら渡したかを一度書き出してみることです。金額がはっきりすれば、悩む必要があるのかどうかもはっきりします。
積立額の目安については月1万円の積立でも意味ある?20年後の試算で解説しています。一緒に少しずつ学んでいきましょう。
