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この記事でわかること
- NISA口座の損失が税金の計算から外れる仕組み
- 同じ金額の損でも特定口座と何が違うか
- 損が出たときに確認したい順番
この記事の目次
- ▸ NISAの損は、税金の計算の中に入ってこない
- ▸ 損益通算と繰越控除は、課税口座のための救済ルール
- ▸ 「損もなかったことになる」という言い方が誤解を生みます
- ▸ 年間取引報告書にNISA分が載っていなくて気づきました
- ▸ 損が出たときに効いてくる3つの注意点
- ▸ 損が出たときに確認したいチェックリスト
- ▸ よくある質問
- ▸ Q. NISAで損したとき、確定申告をすれば取り戻せますか?
- ▸ Q. NISAの損と特定口座の利益を相殺することはできますか?
- ▸ Q. NISAで損を確定させたら、その分の枠は使えなくなりますか?
- ▸ Q. 損益通算ができないなら、NISAは使わない方がいいのでしょうか?
- ▸ まとめ|「非課税」の裏側もセットで知っておく
NISAの損は、税金の計算の中に入ってこない
保有している投資信託が値下がりしたままだと、「いったん売って損を確定させれば、その分だけ税金が安くなるのでは」と考えたくなります。私も証券口座の仕組みを調べ始めた頃、まったく同じことを思っていました。
ところが、その節税はNISA口座では使えません。NISA口座で生じた損失は、ほかの口座の利益と相殺することも、翌年以降に持ち越すこともできません。国税庁のタックスアンサーにも、非課税口座(NISA)内の上場株式等を譲渡して生じた譲渡損失については損益通算および繰越控除はできない、とはっきり書かれています(国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」・2026年8月11日時点で公式サイトを確認)。
つまり、NISAで損を確定させても、税金の面では何も起きません。この記事では、その仕組みと、損が出たときに何を確認すればいいのかを順番に見ていきます。
損益通算と繰越控除は、課税口座のための救済ルール
まず言葉の意味からです。
損益通算とは、同じ年の中で出た利益と損失を差し引きして、税金がかかる金額を小さくする仕組みのことです。たとえばA証券の特定口座で30万円の利益、B証券の特定口座で30万円の損失が出た場合、差し引きゼロとして扱われ、その年の税金はかかりません。
繰越控除は、その年に引ききれなかった損失を、翌年以降に持ち越して使える仕組みです。上場株式等の場合、確定申告を続けることを条件に、損失が出た年の翌年以後3年間にわたって繰り越せます(国税庁「No.1474」)。
いずれも、利益に約20%の税金がかかることを前提にした救済ルールです。
| 項目 | NISA口座 | 特定口座・一般口座 |
|---|---|---|
| 利益への課税 | 非課税 | 20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税) |
| 損失の損益通算 | できない | できる |
| 損失の繰越控除 | できない | 確定申告を条件に最長3年 |
| 確定申告 | 不要 | 口座の種類や目的により必要 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.1463・No.1474/2026年8月11日時点で公式サイトを確認
特定口座そのものの仕組みは特定口座って何?源泉徴収あり・なしを初心者目線で整理で解説しています。
「損もなかったことになる」という言い方が誤解を生みます
NISAの説明でよく見かけるのが「損失はなかったものとみなされる」という表現です。これは税務上の扱いを短く言い表したものですが、初めて読むと「値下がり分が帳消しになる」と受け取ってしまいがちです。
金融庁のNISA特設サイトにも、注記として、NISA口座で保有している商品を売却した場合に損益がなくなるということではない、という趣旨の説明が置かれています(金融庁「NISAを知る」・2026年8月11日時点で公式サイトを確認)。
減ったお金は実際に減っています。なかったことになるのは、あくまで税金を計算するときの扱いだけです。ここを取り違えると、「NISAなら損しても大丈夫」という危うい理解につながります。
年間取引報告書にNISA分が載っていなくて気づきました
私自身がこれを実感したのは、証券会社から届いた年間取引報告書を眺めていたときです。
その年は、特定口座で持っていた投信を少し利益確定していて、一方でNISA口座の別の投信は含み損の状態でした。頭の中では「トータルではほぼトントンだから、税金もそんなにかからないはず」と勝手に計算していました。
ところが報告書に並んでいたのは特定口座の売却益だけで、NISA口座の数字はどこにも出てきません。同じ50万円の損でも、特定口座なら約10万円の税負担が軽くなる一方、NISAでは0円です(50万円×20.315%=約10万1,500円で計算)。片方だけが税金の計算に乗る、というのはこういうことかと、そこでようやく腹に落ちました。
繰り返しになりますが、これは制度の不備ではありません。利益に税金がかからない代わりに、損失の救済ルールも外れている、という表と裏の関係です。
損が出たときに効いてくる3つの注意点
ここが今回いちばん伝えたい部分です。
1つ目は、税金の面での挽回手段がないことです。課税口座なら、損を確定させて他の利益と相殺し、還付を受けるという選択肢があります。NISAにはその選択肢がありません。
2つ目は、損切りしても枠がすぐ戻らないことです。売却した商品の簿価分の非課税枠が復活するのは翌年以降です(金融庁「NISAを知る」)。損を確定させたうえに、その年は枠も使えないという二重の不利が生じます。復活の時期は新NISAは売ると枠が復活する?戻る時期と注意点で解説しています。
3つ目は、頻繁な売買との相性です。売ったり買ったりを繰り返す前提の取引は、損が出たときの受け皿がNISAにはありません。値動きの大きい商品をNISAに入れるかどうかを考えるとき、この点は判断材料の一つになります。
なお、含み損が出ている段階でどう考えるかは税金とは別の話で、積立投資で含み損が出たら?売る前の3つの視点にまとめています。
損が出たときに確認したいチェックリスト
- □ その損は、NISA口座と課税口座のどちらで出ているか確認した
- □ NISA分は税金の計算に入らないことを理解している
- □ 課税口座に相殺できる利益があるか、年間取引報告書で確認した
- □ 売却した場合、非課税枠が戻るのは翌年だと理解している
- □ 売る理由が「税金対策」になっていないか点検した
- □ そもそもの投資額が自分のリスク許容度に合っているか見直した
最後の項目については、リスク許容度とは?自分に合う投資額の決め方で解説しています。
よくある質問
まとめ|「非課税」の裏側もセットで知っておく
NISAの損失は、税金の計算の外側にあります。損益通算も繰越控除もできず、確定申告をしても状況は変わりません。利益に課税されない代わりに、損したときの救済も付いてこない——この表と裏を両方知っておくと、値下がり局面で慌てにくくなります。
売る理由が「税金対策」だけになっていないか、そこを一度確認してみてください。次の一歩としては、ご自身の保有商品がNISA口座と課税口座のどちらに入っているかを、証券会社の残高画面で見分けるところから始めると分かりやすいです。口座の作り方や入口の選び方はSBI証券で新NISAを始める完全ガイドにまとめています。
一緒に少しずつ学んでいきましょう。
