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この記事でわかること
- 実質コストが載っている書類と、見るべき2か所
- 信託報酬の外側にかかる4種類の費用
- 総経費率と費用明細の合計が一致しない理由
この記事の目次
- ▸ 信託報酬0.05%台を選んだのに、引かれているのはそれだけ?
- ▸ 見る場所は交付運用報告書の2か所
- ▸ 信託報酬の外側にある4種類の費用
- ▸ 総経費率と費用明細の合計は一致しない
- ▸ 費用明細を開いて並べたら、差は0.036%でした
- ▸ 実質コストは「過去の実績」であって約束ではない
- ▸ 実質コストを確認するときのチェックリスト
- ▸ よくある質問
- ▸ Q. 実質コストは自分で計算する必要がありますか?
- ▸ Q. 運用報告書はどこで手に入りますか?
- ▸ Q. 目論見書に載っている総経費率だけでは足りませんか?
- ▸ Q. 実質コストが高いファンドは避けたほうがいいですか?
- ▸ まとめ:見るのは「合計の行」と「総経費率」
信託報酬0.05%台を選んだのに、引かれているのはそれだけ?
ファンドを選ぶとき、私が最初に比べたのは信託報酬でした。0.05%台と0.5%台なら、迷わず前者を選びます。
ただ、口座で運用を始めてしばらくして、ふと疑問が出てきました。ファンドは世界中の株を売ったり買ったりしているはずで、その売買手数料は誰が払っているのだろう、と。海外の株を預けておく費用も、監査法人に見てもらう費用も、どこかで発生しているはずです。
調べてみると、そうした費用は信託報酬とは別に、ファンドの財産から引かれていました。この合計を指す言葉が「実質コスト」です。
見る場所は交付運用報告書の2か所
実質コストは、目論見書ではなく交付運用報告書に書かれています。運用会社の公式サイトでファンド名を検索すると、各ファンドのページからPDFでダウンロードできます。
開いたら見るのは次の2か所です。
1つ目は「1万口当たりの費用明細」という表。ここに、その期間中に実際にかかった費用が項目別に並んでいます。表のいちばん下にある合計の行が、実質コストにあたる数字です。
「1万口当たり」は、口数(持ち分の単位)1万口を基準にそろえた表示のことです。基準価額も1万口あたりで表示されるので、同じものさしで比べられるようになっています。金額の隣に比率(%)の欄もあるので、他のファンドと比べるときはそちらを使います。
2つ目は少し後ろのページにある「総経費率」。円グラフと一緒に「総経費率(年率)は〇〇%です」と書かれています。
このふたつは似た数字ですが、範囲が違います。その違いが、あとで出てくる「一致しない」問題につながります。
信託報酬の外側にある4種類の費用
費用明細に並んでいる項目を、実際の数字で見てみます。以下は eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の第7期(2024年4月26日〜2025年4月25日)の交付運用報告書に記載されている数字です(2026年8月18日時点で運用会社の公式サイトを確認)。
| 項目 | 1万口当たり | 比率(年率) | 中身 |
|---|---|---|---|
| 信託報酬 | 15円 | 0.058% | 運用・販売・管理の対価 |
| 売買委託手数料 | 1円 | 0.003% | ファンドが株を売買するときの手数料 |
| 有価証券取引税 | 3円 | 0.013% | 売買のたびにかかる税金 |
| その他費用 | 5円 | 0.020% | 保管費用・監査費用など |
| 合計 | 24円 | 0.094% | 実質コスト |
出典:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)第7期交付運用報告書・2025年
信託報酬は0.058%ですが、合計は0.094%。差は0.036%で、比率にすると信託報酬の約1.6倍になっています。
その他費用の中身を見ると、5円のうち4.7円ほどが保管費用でした。海外の株式を現地の金融機関に預けておくための費用です。日本株だけで運用するファンドなら、この項目はほとんど発生しません。投資対象がどこの国かで、乗ってくる費用が変わることがわかります。
なお、購入時手数料はこの表には出てきません。購入時手数料がかからないファンドの考え方はノーロードとは?購入時手数料で損しない確認点で解説しています。
総経費率と費用明細の合計は一致しない
ここが私がいちばん引っかかったところです。先ほどの費用明細の合計は0.094%でしたが、同じ書類に載っている総経費率は0.08%と書かれていました。
同じファンド、同じ期間なのに数字が違います。
理由は総経費率の定義にあります。投資信託協会のルールでは、総経費率は「当期中の運用・管理にかかった費用の総額(原則として、募集手数料、売買委託手数料及び有価証券取引税を除く)」を基準に計算することになっています(投資信託及び投資法人に係る運用報告書等に関する規則・投資信託協会)。
つまり、売買委託手数料と有価証券取引税は総経費率に含まれていません。この2つを足すと0.016%。0.08%に足すと、費用明細の合計0.094%に近づきます。
目論見書の総経費率で当たりをつけて、気になったら運用報告書の費用明細で合計を確認する。この二段構えが、いまのところ私の見方です。
繰り返しになりますが、どちらが正しいという話ではなく、含んでいる範囲が違うだけです。数字が食い違っていても、書類の間違いではありません。
費用明細を開いて並べたら、差は0.036%でした
私が最初に運用報告書を開いたとき、正直「どのページを見ればいいのか」で5分ほど迷いました。運用の経過やベンチマークとの差といったグラフが続いていて、費用の話はその後ろにあります。
見つけてからは早く、費用明細の表を上から下まで書き写して電卓を叩きました。信託報酬0.058%、合計0.094%。差は0.036%です。
100万円を1年置いたとして、差額は360円ほど。「思ったより小さい」というのが正直な感想でした。同時に、これは信託報酬がもともと0.05%台という前提だからで、信託報酬が1%を超えるファンドなら、上乗せされる金額も当然大きくなります。
金額の大小より、「信託報酬の下にもう1行ある」と知っているかどうかが分かれ目だと感じました。乗り換えを考えるときのコスト確認も同じで、投資信託の乗り換えは損する?確認したい3つのコストで解説しています。
実質コストは「過去の実績」であって約束ではない
ここまで実質コストの調べ方を見てきましたが、注意点があります。
1つ目は、実質コストが過去の期間の実績値だということです。次の期に同じ数字になる保証はありません。ファンドが大きく売買した期は売買委託手数料が増えますし、資金が急に流出入した期も数字が動きます。
2つ目は、設定されたばかりのファンドには数字がないことです。運用報告書は決算を迎えてから作られるので、新しいファンドは比べようがありません。
3つ目は、実質コストの低さだけで選ぶ危うさです。コストは低いほど手元に残りやすい要素ですが、そもそも投資対象が自分の目的に合っているかが先にあります。日本株だけのファンドは保管費用が乗らないぶんコストが低く出やすいですが、それは「日本株だけに投資している」という中身の話でもあります。
コストの基本的な考え方は信託報酬とは?投資信託の隠れコストを整理にまとめてあります。
実質コストを確認するときのチェックリスト
- □ 運用会社の公式サイトでそのファンドの交付運用報告書を開いたか
- □ 「1万口当たりの費用明細」の合計の行を見たか
- □ 合計と信託報酬の差が、どの項目から来ているか確認したか
- □ 参考情報の「総経費率」も見たか
- □ 総経費率には売買委託手数料と有価証券取引税が含まれないと理解しているか
- □ その数字が「いつの期間」のものか確認したか
- □ 同じ指数に連動する別のファンドとも比べてみたか
よくある質問
まとめ:見るのは「合計の行」と「総経費率」
信託報酬は、ファンドに払う費用の一部です。その外側に、売買委託手数料・有価証券取引税・保管費用などが乗っています。全部を足した数字が実質コストで、交付運用報告書の「1万口当たりの費用明細」の合計欄に載っています。
もうひとつの総経費率は、売買委託手数料と有価証券取引税を含まないぶん、費用明細の合計より少し低く出ます。範囲の違いを知っておくと、数字が食い違っても迷いません。
次の一歩は、いま積み立てているファンドの交付運用報告書を1本だけ開いて、合計の行を見てみることです。5分あれば終わります。
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