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この記事でわかること
- 評価損益とトータルリターンが測っている範囲の違い
- 分配金を受け取ると2つの数字がズレる仕組み
- 運用成績を確認するときの注意点とチェックリスト
この記事の目次
証券会社のアプリを開くと「評価損益 +12,300円」のように損益が表示されます。数字はプラス。でも「じゃあ今までで合計いくら増えたの?」と聞かれると、うまく答えられない。私も最初はそうでした。
同じ商品を持っているのに、画面によって「評価損益」と「トータルリターン」という2つの損益が出てきます。金額も一致しません。この2つは何が違うのかを、計算式のレベルから見ていきます。
測っている範囲が違うだけで、どちらも間違いではない
先に答えを書くと、2つの数字は対象にしている期間と範囲が違います。
評価損益は、いま手元に残っている分の含み損益です。今日の値段で売ったらいくらになるか、という現在地の話。
トータルリターンは、その商品を買った日から今日までの受け取ったお金も売った分も全部足した合計です。過去に受け取った分配金や、途中で一部売った代金まで含みます。
つまり、評価損益は「今」を、トータルリターンは「これまで」を見ています。どちらが正しいという話ではなく、知りたいことによって見る場所が変わります。
私も、この使い分けを知るまでは2つの数字を毎回見比べては混乱していました。
トータルリターンの計算式は引き算1本
各証券会社が公表している計算式は、ほぼ共通です。
トータルリターン=評価金額+累計受取分配金額+累計売付金額-累計買付金額
(SBI証券・楽天証券・マネックス証券・大和証券の各公式ページ・2026年8月20日時点で確認)
4つの数字の中身は次のとおりです。
1つ目は評価金額で、今日の基準価額(投資信託の値段。多くは1万口あたりで表示されます)で計算した保有分の時価です。
2つ目は累計受取分配金額で、これまで受け取った分配金の合計です。税引後の金額で集計している会社が多いので、お使いの証券会社の注記を確認してください。
3つ目は累計売付金額で、途中で一部売却したときに受け取った代金の合計です。
4つ目は累計買付金額で、購入時に支払った金額の合計です。購入時手数料を含めて集計するのが一般的です。
一方の評価損益は、もっと単純です。
評価損益=(現在の基準価額-取得単価)×保有口数
取得単価は平均の買値のことで、買い付けるたびに計算し直されます。口数は投資信託の保有量を表す単位です。基準価額そのものの読み方は基準価額とは?高い・安いの誤解を解くで解説しています。
| 項目 | 評価損益 | トータルリターン |
|---|---|---|
| 見ている範囲 | いま保有している分だけ | 買った日から今日までの合計 |
| 分配金 | 含まない | 含む(累計) |
| 売却済みの分 | 含まない | 含む(累計) |
| 購入時手数料 | 取得単価に反映 | 買付金額に含める |
| 主な使いみち | 今売ったらいくらかの確認 | この商品での通算損益の確認 |
| 確定申告 | 使えない | 使えない |
出典:各社公式サイト・2026年8月20日時点で確認
なお、トータルリターンは日本証券業協会の自主規制規則により、2014年12月から証券会社が投資家へ年1回以上通知することになっています(日本証券業協会・自主規制規則)。年に一度届く「トータルリターン通知書」がこれにあたります。
評価損益がプラスでも、トータルではマイナスのことがある
2つの数字が食い違う代表例が、分配金を受け取っているケースです。
分配金は運用資産の中から支払われるため、支払われた分だけ基準価額は下がります。受取型を選んでいると、現金は手元に入る一方で保有分の評価は目減りしていきます。
たとえば毎月分配型の商品を長く持っていた場合、分配金をたくさん受け取ったあとに基準価額が大きく下がっていれば、評価損益はマイナスでも累計分配金を足したトータルリターンはプラス、ということが起こります。
逆のパターンもあります。分配金として払い出された金額よりも基準価額の下落幅が大きければ、受け取った現金を足してもトータルではマイナスです。分配金の仕組みそのものは毎月分配型は危ない?分配金の落とし穴で詳しく書いています。
受取と再投資のどちらを選ぶかで手元の見え方も変わるので、分配金は再投資と受取どっち?目的別の選び方もあわせて確認してみてください。
年1回届く通知で、分配金が別枠で集計されていると知りました
私は積立を始めてしばらく、アプリのトップに出る評価損益だけを見ていました。プラスなら安心、マイナスなら見なかったことにする、という雑な見方です。
その後、年1回のトータルリターン通知で、受け取った分配金が評価損益とは別に累計されていることを知りました。評価損益は「今ある分」しか見ていないという当たり前のことに、そこで初めて気づいた形です。
いま確認しているのは、アプリの評価損益(現在地)と、年1回のトータルリターン(通算)の2つです。片方だけでは、増えたのか減ったのかを正確には言えません。
トータルリターンで見落としやすい3つのこと
便利な数字ですが、そのまま鵜呑みにできない点もあります。
1つ目は、税金の計算には使えないことです。各社とも、トータルリターンは確定申告などの税額計算には使用できないと明記しています(各社公式サイト・2026年8月20日時点で確認)。売買で生じた損益の計算は、特定口座の年間取引報告書(1年分の売買と損益がまとめられた書類)などで行います。損益通算の考え方はNISAで損したら税金は戻る?損益通算の落とし穴にまとめています。
2つ目は、集計の範囲が証券会社ごとに違うことです。他社から移管した投資信託は移管前のデータが反映されない場合がある、と案内している会社があります。複数の証券会社に同じ商品を分けて持っている場合も、当然ながら合算はされません。
3つ目は、多くの画面で「金額」表示が基本で、何年かけてその金額になったかは表示されないことです。同じ+10万円でも、2年で到達したのか10年かかったのかで意味は変わります。年率で比べたいときは、保有期間もあわせて見る必要があります。
運用成績を確認するときのチェックリスト
□ 見ている数字が「評価損益」か「トータルリターン」かを確認した
□ 分配金を受け取っている商品かどうかを確認した
□ トータルリターンの集計開始時点(移管前を含むか)を確認した
□ 複数の証券会社に分けて持っていないか確認した
□ 保有期間の長さもあわせて見た
□ 税金の計算には年間取引報告書など別の書類を使うと理解した
よくある質問
まとめ
評価損益は「今この瞬間の含み損益」、トータルリターンは「買ってから今日までの通算損益」。同じ商品でも数字が違うのは、測っている範囲が違うからでした。
分配金を受け取っている商品ほど2つの差は開きます。どちらか片方だけで判断すると、増えているのに減ったと思ったり、その逆が起きたりします。
次の一歩としては、いま使っている証券会社の投資信託画面で「トータルリターン」のメニューがどこにあるかを一度探してみてください。場所さえ分かれば、次からは1分で確認できます。
これから口座を開く方は、申し込む入口や順番によって受け取れる特典が変わることがあります。SBI証券で新NISAを始める完全ガイドで手順をまとめているので、始める前に確認しておくと後戻りが減ります。
数字の意味が分かると、値動きに振り回されにくくなります。一緒に少しずつ学んでいきましょう。
